レーザー加工機を使った基板の製作

まえがき

大陸の業者にプリント基板を格安で製造してもらえる昨今、わざわざ逆張りしてエッチングで基板を自作してみたので備忘録を兼ねて工程をまとめておきます。基板をエッチングで作ると、大陸から着弾するのを待たなくて良いので短い期間に何回も試作することができます。慣れれば2時間掛からないと思います。

モータードライバの基板

基板製作の手順

サンハヤトから新シリーズが出たばかりですが、今回は感光基板は使いません。生基板を塗装し、配線をつくらない部分の塗膜をレーザーで焼き飛ばしてエッチング液に漬けて露出した銅箔を溶かす方法で基板を作ります。

基板パターンの注意点

エッチング基板にソルダーレジスト(緑色の膜)を塗るのは難しそうだったので諦めました。部品や銅線をはんだ付けする際にブリッジしてしまうのを避けるため、部品の配置とパターン間のクリアランスには注意が必要です。配線幅は0.6mmくらいあれば安心だと思います。

パターン間を広くする

SVGファイルの出力・加工

SVGエクスポートの設定

KiCadから出力したSVG画像をレーザー加工機が読み込めるようにPNG画像に変換します。専用ツールを作ったのでご活用ください。

github.com

以下のように実行してください。picture.svgはKiCadで出力したSVG画像、17はパターンをどれだけ膨張させるかのパラメータです。ここでパターンを膨張させないと、完成した基板のパターンは想定よりもだいぶ細くなってしまいます。元から細いパターンの場合は消えてしまうかもしれません。これは、レーザー光の直径が0では無いのとエッチング液がマスキング塗料を侵食するのが原因です。このパラメータは適宜いい感じに変更してください。pythonのパッケージが足りないようでしたら適宜ぶち込んでください。

$ python tool.py picture.svg 17

実行すると4つの画像が出力されます。raw.pngsvgpngに変換したものをそのまま出力したものです。raw.pngの余分な部分をカットしたものがin.pngです。in.pngの黒い部分を膨張させ、白黒反転したものがout.pngです。diff.pngは膨張した部分を表しています。

in.png

 

out.png

diff.png

ここまでは事前の準備です。ここから実際に基板を加工していきます。

 

基板の準備

生基板(FR4や紙フェノールの基材に銅箔を張ったもの)を使います。サンハヤトのものがお勧めです。まず、生基板にサーフェーサーをスプレーして下地を作ります。サーフェーサーが乾いてから黒ラッカーをスプレーします。タミヤのものがお勧めです。ここでサーフェーサーを塗布せずに黒ラッカーだけで済ませると、エッチング液に漬けているときに黒ラッカーが剥がれてやり直しになってしまいます。塗装したら基板の外形をカットします。銅箔を傷つけないように注意してください。

レーザー加工

レーザー加工機で塗膜を焼き飛ばしていきます。レーザー加工機png画像を読み込めるものなら多分なんでもいけます。私はNEJE Master2 20Wを使いました。加工範囲が塗装した生基板と合っているか確認しましょう。基板が動いてしまわないようにMDFの板に貼り付けるなどの工夫も必要です。

 

NEJE Master2 20Wと純正ソフトを使う場合の加工パラメータ例

Laser Power Burning Time Speed 走査回数
20% 15mS Slow 1

 

基板焼き

加工後

エッチング

基板をエッチング液に漬けていきます。エッチング液はサンハヤトのものをお勧めしますが、クエン酸オキシドールで自作することもできます。チャック付き袋やカップエッチング液と基板を入れ、40から45℃のお湯に漬けます。40℃以下の場合は時間がかかるので塗装剥がれに注意しましょう。サーフェーサーを塗布していれば多少時間が掛かっても大丈夫だと思います。エッチング液をこぼさないように...

エッチング

容器を少し揺らしながらおよそ5分おきに基板を引き揚げて水でエッチング液を洗い流し、銅箔の溶け具合を確認しましょう。20分くらいでエッチングが完了するはずです。

仕上げ

よく水で洗ったらアセトンで塗料を剥がします。Amazonでアセトン100%の除光液が買えます。必要に応じてドリルで穴を開けてスルーホールを作ります。必要に応じてフラックスを塗ります。

ロジン系ポストフラックスは長期的に酸化を防ぐのではなく、酸化膜を取り除きはんだ付け中の酸化を防ぐ役割があります。完成した基板を暫く保管する場合は、ロジン系ポストフラックスを塗って保管すると銅箔が腐食する原因になるので、酸化や腐食を防いで保管したい場合は水溶性プリフラックスを塗って表面処理(OSP)する必要があります。はんだ槽に沈めてはんだコーティング(HASL)するのもありです。

部品を実装してみた

あとがき

エッチングはあんまり精度が出ないし廃液の処理も面倒なので、特に急いでない場合はJLCPCBとかPCBGOGOを使うと幸せになれます。